介護用品

第１回目は、介護施設向けの旅行サービス「旅介」。介護現場でどのように活用し、どう役立つのか、社長の栗原さんを突撃しました。 旅行に行きたいのに行けないそんな現状を変えるために始めた「旅介」。 ニッコリー「旅介」は、すべての人に気軽に旅を楽しんでもらいたいという想いから始まった、介護施設向けの旅行サービスとオンラインツアーサービスだとうかがっています。介護施設向けの旅を扱おうと思ったきっかけを教えてください。 栗原社長東京トラベルパートナーズを設立した当時は主に法人向けの旅行を扱っていて、介護業界には興味がありませんでした。介護旅行を扱っている会社にヒアリングすると手間がかかる割に儲からない、絶対やめた方がいいと言われ、大手は撤退、小規模が数社がなんとか頑張っているような状態でした。そのような中、グループ会社が運営している介護施設の方、400人くらいにアンケートを取ってみると、旅行に行けるなら行きたいと答えた方が71％もいました。過去数年の間に旅行された方はなんと８％しかいなかった。ほとんどの方が行きたいのに行けない。正直、業界の先輩たちは皆止めろと言い、儲からないと判っているサービスを始めるには勇気が入りました。しかし、現場には旅行に行きたいと願う人がこんなにもたくさんいる。やり方しだいでビジネスになるんじゃないか。自分ならできるんじゃないかと、介護旅行を始めることにしました。 ニッコリー自ら厳しい世界に飛び込むなんて、すごいというか、変わってるというか…（笑）。元プロボクサーだと伺いましたが、、これは必ず負けると判っている試合に臨む感じですよね！？ 栗原社長負けず嫌いとチャレンジ精神があって、人と同じことをするのは好きじゃないですね。ある日、介護旅行で江の島の日帰りツアーに添乗したんです。その時、デッキで30分くらい海を眺めている参加者さんがいて、「海、お好きなんですか？」とたずねると、「海を見るのもこれが最後かもしれないからね」と涙を流して喜んでくださった。法人の旅行は当社が参入しなくても誰かがやるわけで、自分の存在意義はない。でも、自分がやらなかったら、この方はこの先ずっと海を見ることがなかったかもしれないと思うと、介護旅行をやるべきだと決心がつきました。それから、それまでの法人向けの旅行を一切やめて、介護旅行だけに的を絞った「旅介」というブランドをスタートさせたのです 安く、楽しく、気軽に！介護施設から旅立てるツアーを。 ニッコリー旅介」は介護施設向けのツアーということですが、どういう点が介護施設向けなのでしょう？ 栗原社長定員10名程度のリフト付き福祉車両を使った少人数制のツアーで、介護施設で5名参加者を集めていただけば、当日は施設までお迎えにまいります。介護タクシーの資格もありますし、ドライバーは介護資格を持ったプロの添乗員。皆さんの介助をしながら旅をご案内します。 ニッコリードライバーさんにも介助いただけるとは心強いですね。少人数のツアーにしたのは、何か理由があるのですか？ 栗原社長リフト付きのバスで行く大人数のツアーだと、トイレ休憩するのも参加者全員を降ろすのに1時間はかかってしまいます。そんなのぜんぜん優しくないじゃないですか。だから、少人数かつ小さな車両のツアーが基本です。2時間程度で気軽に出掛けられるツアーもご用意しています。 ニッコリー施設のお仲間だけで、気を遣わずに参加できるのはいいですね。ほかに、介護施設にとってのメリットはありますか？ 栗原社長価格が革命的なんです！旅介を始めたころ、他社の介護旅行は日帰りでも5万円はかかる高額ツアーが多かったんです。その点、旅介では当初9,800円で江の島ツアーを実施していました。はとバスツアーと同じくらいか、やや高いくらいの金額設定にしています。 ニッコリーえ！！！どうしてそんなに安くできるんですか？ 栗原社長施設から介助者も同行してもらっているんですよ。こちらで介助者を用意すると、どうしてもツアー料金が高くなります。同行するスタッフさんのツアー代金は無料で、食事など実費のみいただいています。また、車両を持っていることで、移動の部分を他社に依頼することもなく、そのぶん安く旅を提供することができるんです。 ニッコリーツアー料金が安いとレクリエーションのひとつとして利用しやすいですね。施設で旅を計画するとなると下調べや手配も大変だし、お任せできるのはありがたいと思います。少し遠出すれば、入居者さんや利用者さんにいつもと違う楽しさを感じてもらえますし。参加された皆さんの様子はいかがですか？何かエピソードがあれば教えてください。 栗原社長目黒雅叙園が100周年の時に100歳の方が参加されて、同じ歳だととても喜ばれていました。その後の東京タワーでも、「登るのは初めて！私の青春がやってきたわ！」と。翌月もまたご参加いただき、今度はスカイツリーに行ったのですが「今が楽しくて仕方ない！」と幸せをかみしめているご様子でした。皆さん、一張羅着ておめかしして、旅で元気になる方もいますし、気持ちが豊かになっているのを感じます。旅介がなかったら、こうした体験をする機会がなかったんだと思うと、会社をつくって良かったとつくづく思いますね。 生放送で介護施設とつながり、生の瞬間を共有する。 ニッコリー旅介にはリアルな旅行のほかにオンラインツアーもありますね。 栗原社長はい。介護施設にいながらにして旅行を楽しんでもらう新しいレクリエーションとして、オンラインツアーの「旅介ちゃんねる」を運営しています。旅介がめざしているのは、すべての人に旅行を楽しんでもらうこと。実際のところ、介護施設全体でも旅行に行ける人は2割ほどです。残りの8割の方たちにも旅行を楽しんでもらおうと、旅介ちゃんねるを始める前から、旅行ツアーと並行してVRを使ったバーチャル旅行体験というイベントを行っていました。ところが、新型コロナの感染拡大で2020年の2月にはすべてのツアーを中止せざるを得なくなり…。本来なら3月末からお花見ツアーを予定していましたし、ZOOMでオンラインお花見を開催することにしたんです。ツアーを利用していただいていた施設にメールで案内すると、かなり反響がありました。でも、実際は大失敗。ZOOMも会議で使うには問題ありませんが、動きながらでは難しく、桜の花びらがモザイク状態で花見を楽しむような画質ではありませんでした。やはり、オンラインツアーにはテレビの旅番組と同じくらいの美しい画質は必要。さらに、生中継で視聴者が参加できたら面白いんじゃないかと考え、6月にアキラ100％さんをリポーターに起用して高画質の生放送配信を始めました。 ニッコリー緊急事態宣言が発令され移動が制限されてから、旅行会社をはじめいろいろな会社がオンラインツアーを開始していましたが、他社のオンラインツアーとどこが違うのでしょうか？ 栗原社長大きな違いは、介護施設に特化した、生放送・参加型の番組であるということです。番組の中で体操やクイズを取り入れていますし、介護施設は旅介ちゃんねるをレクリエーションのひとつとして活用できます。また、チャットを使ってアキラ100％さんやごぼう先生など現地のリポーターとやり取りしながら旅を楽しんだり、じゃんけんタイムもあるんですよ。 ニッコリーリポーターも個性的！クイズやじゃんけんに参加できるのも楽しみのひとつなんですね。チャット機能はどのように使うのですか？ 栗原社長施設のスタッフさんがスマホから送ってくれる場合が多いと思います。「右側に映っているものは何ですか？」とか「○○さんが寝ちゃったので起こしてください」とか、皆さん会話を楽しまれていますよ。 ニッコリーオモシロイですね。来たコメントに対してリポーターさんが答えたり会話ができると、一緒に旅をしている気分になれそうです。まさに、生放送ならではの良さですね。 栗原社長「生放送」というところにこだわっていて、今日の、今の、この瞬間を見ていただきたいんですよ。「生」の、生きている時間を届けることに価値があると思っていて、桜も満開じゃないときもありますが、それがリアルな「旅」ですしね。 ニッコリーほかにも旅介ちゃんねるならではの楽しみ方はありますか？ 栗原社長「旅介ポイント」というサービスがあって、番組の中でクイズに正解したりじゃんけんに勝つとポイントが付与されます。ポイント数に応じてお菓子やごぼう先生のDVDなどの景品と交換できる仕組みなんです。ただクイズに答えたり、じゃんけんをするだけではつまらないじゃないですか。その行為が実際に物に変わるところまで動線をつくれば、本当の参加型になるんじゃないかと。ポイント稼いでみんなのおやつがもらえるとなると、じゃんけんする時の熱量も変わってくると思います。最近、ポイント交換が増えてきたので、結構利用されているようですね。 ニッコリーなるほど！クイズやじゃんけんをすることにも意義があるんですね。みんなでポイ活するのも楽しいでしょうね。ところで、これまで多くのオンラインツアーを配信されてきたかと思いますが、栗原社長の神回を教えてください。 栗原社長もう300本くらい配信していますが、2020年の9月にフランスのベルサイユ宮殿を貸し切って、辻仁成さんをレポーターに迎えた回があったんです。会社のメールサーバーが壊れるくらいの反響でしたが、残念ながら権利の関係でお蔵入りになりました。2021年の2月27日に現在の「旅介ちゃんねる」のサイトがオープンし、その1回目に行った伊勢神宮も思い出深いですね。あの頃、日本中の旅行会社が伊勢神宮にオファーしていたはずで、当社も20回ほどオファーしましたがオンライン参拝は認められないと。でも、いろいろなご縁で三重県庁との共同事業として、日本で唯一の伊勢神宮オフィシャルオンラインツアーが実現しました。あと、最近のヒット企画は、全国の強豪吹奏楽部のライブ配信です。高校生に司会もお任せして、聞きごたえもあるし多くの施設の方にご視聴いただきました。 ニッコリー伊勢神宮へ行きたくても行けない方は多いと思うので、オンラインで参拝できる機会は貴重ですよ。「行きたい！」を叶えてくれるオンラインツアーですね。 すべての高齢者に、「旅」で生きる楽しみや喜びを届けていきたい。 ニッコリー旅介ちゃんねるも楽しみの幅が広がりつつあるようですが、これからどんなサービスに進化させていく予定なのでしょうか？ 栗原社長5月から旅介ちゃんねるがテレビのアプリになります。ケーブルテレビに加入していたり、スマートテレビをお使いならテレビのリモコンで気軽に視聴でき、パスワードの入力やテレビとパソコンをケーブルでつなぐというわずらわしさはなくなります。さらに、体操などいつでも視聴できる、生放送ではないストックのコンテンツも充実させていく予定です。食事の前の口腔体操も、オンラインツアーも、活動の合間に流す風景動画なども旅介ちゃんねるですべて視聴できればDVDを入れ替える手間もありません。月額料金も変わらず、法人会員なら月額5,500円で見放題なので、うまく活用いただけると嬉しいですね。 ニッコリーたしかに、ごぼう先生の体操もDVDだと同じものを繰り返し見ることになりますけど、新しい体操動画が追加されれば入居者さん利用者さんも新鮮ですね。テレビのリモコンで操作できればパソコンが苦手でも大丈夫だし、忙しいスタッフさんには便利ですよ。 栗原社長昨年の9月には、新企画としてオンラインツアーに出演できるイベントを開催したんです。ごぼう先生がレポーターの回で、近隣の施設から30人ほど現地に集まっていただいて、一緒に体操したり、施設で見ているお仲間とやり取りしたり楽しまれていました。公園へのちょっとした外出が一大イベントになるので、こうした企画を全国の介護施設と一緒につくっていきたいですね。旅介ちゃんねるで外出の機会を創出していきたいと思っています。 ニッコリーそれはワクワクする体験ですね。いつもテレビで見ている番組に出演できて、一緒に体操して、見ている人たちとつながって！素敵な思い出になるでしょうね。 栗原社長これからは、介護施設だけではなく、病院や在宅で介護を受けている方、元気に自宅で過ごしている方など高齢者全般にサービスを拡充し、旅介ちゃんねるで旅の楽しみをお届けしたいと思います。一方で、旅行ツアーの方は4月まで業務の都合で休止しているのですが、せっかくオンラインで全国にお客様がひろがったので、対象エリアを広げていければと考えています。 編集部「旅」って、生きていることを楽しむ時間なんだと気づきました。旅介は、そのきっかけをつくる、人生を輝かせてくれるサービスだと思います。 栗原社長非日常を楽しむ「旅」は、やはり日常に必要なものだと思うんです。介護保険を使って生活している人に旅行は必要ない、贅沢品だと考える人もいますが、旅で非日常を楽しむことには価値があります。それを多くの方が実感できるようにしていきたいですね。 旅介 https://www.tokyotravelpartners.jp/ ●多彩なバリアフリープランから選べる、介護施設向けツアー。参加者5名（プラス介助スタッフ）から催行可能です。●介護・添乗資格を持ったスタッフがドライバーとして同行します。●日帰り 半日食事なし（3時間程度）6,000円程度～ ／ 1日昼食付（7時間程度）12,000円程度～※4月末まで一時サービスを休止しています。 旅介ちゃんねる https://tabisuke.tv/ （2024年6月更新）●1300以上の介護・医療施設で、レクリエーションとして活用されているオンラインツアー。●参加型・生中継配信。オンラインツアーをメインに、高校吹奏楽部のコンサートやごぼう先生の体操講座も配信しています。●個人会員は月額2,750円、法人会員は月額5,500円で見放題。過去に配信した番組も視聴できます。（ 記載情報は2024年4月時点のものです） 東京トラベルパートナーズ株式会社 代表取締役 栗原茂行さん 大手旅行代理店で10年間法人営業を担当。2016年に会社を設立、介護施設向けの介護旅行を手掛ける。「同じところにとどまってはいられない。いろいろな所へ行って、見て、経験したい欲求を満たしてくれるのが旅。仕事も、趣味も、人生も“旅”です」と語る根っからの旅好き。夢は、旅介ちゃんねるを毎月海外から配信すること。同行して各国を楽しみながら、全世界制覇を目論んでいる。 最後に、ケアネーネ編集部から一言～！ 旅に行きたくても行けない人には、『旅介ちゃんねる』を見せろ！ 正直なところ、ケアネーネ編集部メンバーは、このサービスが本当に良いものなのか、最初は疑いの目でみていました。栗原社長、ごめんなさい！！！！泣笑だって、今やYouTubeだって、プライムだって、ネトフリだって、好きな時に好きな番組たくさん見られるのに、介護施設向けって、いかにも怪しいじゃないですか。でも、違いました。『旅介ちゃんねる』は、『介護業界』『旅行に行けない人』へ特化した工夫が盛りだくさん。そして、今も日々改良を積み重ねて進化しています。もし、旅に行きたくてもいけないそんな人が身近にいたら、一度お試ししてもらいたい、そう思いました。もう一度、旅する楽しさを思い出させてあげたい、そして、リアルに旅に行くきっかけになったら嬉しいじゃない？一見は百聞にしかず、ぜひ一度ご覧ください。

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