日々介護をしている方の負担を少しでも軽く。介護を受ける方の生活が少しでも快適になるように。福祉・介護用品やサービスに関する情報をお届けする「介護のいいモノ教えまっせ」。ケアネーネ編集部がしっかり見定め、納得したいいモノをご紹介します。
今回ご紹介するのは、東海・北陸エリアに11センターを展開する「中日文化センター」です。
「介護のいいモノ」なのにカルチャーセンター?と、不思議に思うかもしれませんが、最近様々な研究で、学ぶことや社会とつながることは、認知症・介護予防と深くかかわっていることがわかってきました。
ケアネーネを運営するニック株式会社の石村社長がまもなく退任を迎えるこの機会に、リタイア後のより良い生き方のヒントを探しに、中日文化センター栄へ突撃しました。

集い、学び、リタイア後の人生を楽しむ場所。

石村社長、引退後はどうするの? 人生100年だと、あと35年もありますよ。

僕はそんなに生きないと思うな(笑)。
健康で自ら何かできる期間は、あと10年か15年くらいしかないんじゃないかと…。残りの時間を有効に使って、何か証みたいなものを残したいとは感じています。


そんなこといわないで!
健康寿命を延ばしてまだまだ人生楽しみましょうよ。
石村社長、中日文化センターで講座を体験したんですよね。
そもそも、カルチャーセンターって興味ありましたか?

どこの都市にもこういうカルチャーセンターがあることは知っていたけど、正直、僕はやらないだろうと思っていました。
実際に来てみて、講座の種類が多いのには驚きましたね。

栄が規模としては一番大きくて、講座数も多いんですよ。
開講数でいえば1000講座になります。

そんなにあるんだ!
中日文化センターの特長について、もっと教えてください。

中日文化センターは、中日新聞社が運営するカルチャーセンターです。
地方紙ですから、地域密着で地元の皆さまに親しまれ、愛される文化センターをめざしています。中日新聞社が直営しているということで、安心感や信頼感をもってご利用いただいていると思います。

体験してみて、僕と同世代か先輩方が多い印象でしたが、受講者の年齢の幅はどのくらいですか?

一番多いのは60代で次が70代ですね。
50代以上の方が全体の7割強を占めています。
教室のある中日ビルも新しくなり、若い世代も増えつつあります。

講師の中には、僕でも知っているかなり名の通った方もいらっしゃいますね。


はい。
ありがたいことに、東大史料編纂所の本郷和人先生、万葉集研究の第一人者で「令和」の考案者とみられている中西進先生にもレギュラー講座を持っていただいています。
中日新聞グループならではの強みですね。
現場の人間ではアプローチできないような方には新聞社を通じてお願いすることもありますし。書道や茶道などは、オープン当初から地元の著名な先生方に来ていただいているんですよ。

昔から地域の文化を担われているんですねぇ。

そうですね。
文化とか伝統を、脈々と継承するという役割も担っていると思っています。

茶道や華道とか伝統文化もあれば、麻雀、韓国エンタメなど遊びに近い講座もありますよね。

ジャンルの幅はどんどん広がっていて、サブカルといわれるジャンルもありますね。
例えば、こんな講座

日本ドローン安全飛行推進協会理事長
田村徳久ほか

日本プロ麻雀連盟5段
寺戸孝志

日本地図センター客員研究員
今尾恵介

東京猫医療センター院長
服部幸

鉄道フォーラム代表取締役
伊藤博康

興味をそそられる講座がたくさんあって、ひとつに決めるのが難しそうだなぁ。
カルチャーセンターが、
外の世界とつながるきっかけになる。

定年後の男性は抜け殻になるとか聞くけど、それはどうしてなんだろう?
Googleに「定年後 男性」と入れたら「悲惨」だって!

仕事一筋だと思いこんでいるからじゃないですか。
すでに引継ぎを終えたのですが、楽になると同時にすごく寂しい気持ちになったんです。
決して降ろされたわけではなく、自分で決めたことなのに、もう必要とされなくなっている感じが…。
周囲はそうは思っていないでしょうけど、自分じゃなくてもよかったんだ、と考えてしまうんです。
こんな気持ちになるとは思っていませんでしたよ。
考え方を変えなければと、今、すごく感じています。

社長業を終えて、次の人生を楽しもうと意気込んでいると思ってたのに。
石村社長が抜け殻になっちゃうの心配だなぁ。


男性にもいろいろなタイプがあると思うんですよ。
個人的な話なのですが、私の父は定年退職をして、ようやく面倒な人間関係から解放されたと感じていて、自分から外には出ていかないタイプ。集団は避けて、母と旅行などを楽しんでいます。
一方で、妻の父親は積極的に外に出て人とかかわるのが好きで、町内会や老人会にも行くし、かつての仕事仲間と麻雀やゴルフもする。両極端なタイプが身近にいるのはおもしろいですね。やっぱり、義父の方がイキイキしているし、見た目も若々しいですよ。


僕も田中さんのお父さんのようなタイプだと思います。どんどん外に出ていけるのはうらやましいけど、性格的に難しいかなぁ。

会社にいると役割が与えられるけど、それがなくなると地域の中で自分の役割をつくらなきゃいけないもんね。ハードル高そう…

来てみて気づいたのは、カルチャーセンターに通うことが外へ出るひとつの大きなきっかけになるんじゃないかと。
町内会に自ら行くのはムリだけど、講座で同年代や先輩方と何かしらふれあっていく中で、仕事をやっていた時とは違う世界を築けていけたらいいと思いますね。
やっぱり食わず嫌いだった!?
体験してはじめて
カルチャーセンターの楽しさを実感。

石村社長は、「水墨画入門」と「太田牛一の自筆本で読み解く信長公記」の2講座を体験したんですよね。受講してみていかがでしたか?

歴史が好きなんで、体が動くうちは史跡や美術館を巡りたいと思っていたんです。
自らこういう体験をすることはまったく考えていなかったけど、やってみたら意外と楽しかったですね。

まずは、先週受講した水墨画入門の感想を教えてください。



あんなに集中したのは久しぶりで楽しかったです。
仕事でも一つのことだけに集中することはなかなかありませんからね。
そのぶん、めちゃくちゃ疲れました…。

線を引きながら、何度も「悔しい!」ってつぶやいていましたよね。

先生のお手本を見ると、シンプルで簡単そうだと思ったけど、手首を跳ね上げてはいけないと指導されてね。
頭では理解できるけど、その通りに身体が動かないのが悔しかったんです。
でも、思った以上に楽しくて、描いた水墨画は社員みんなに見せましたよ!
水墨画入門
講師:新美術協会理事長 水谷 桑丘さん
墨の濃淡で表現する、シンプルで奥深い水墨画。入門講座ではありますが、10年、20年、30年と続けている方も多く、心落ち着かせ集中力を養い、伝統文化の魅力を身近に感じられる講座です。



先生にお聞きしました!
花や果物など、毎回皆さんが描きたいものを用意しています。題材は同じでも、描き方や表現方法は人それぞれ。白から真っ黒までグラデーションをどう出すか、筆の幅をどう使うか、一筆の間でも濃淡が変化しますし、表現に幅があることも水墨画のおもしろさだと思います。
受講生の皆さんにお聞きしました!
「20年以上続けています。墨をすって心を落ち着かせるのが好きなんです」
「仕事が暇になり趣味を持とうと始めました。道具も紙と筆と墨だけだし、おもしろいですよ」
「講座の後にみんなで行く食事会が楽しみで来ています」

石村さん、歴史好きなら、信長公記の講座は楽しめたんじゃないですか?

信長の半生も知っている方だと思うし、太田牛一が書いた信長公記があることも、それが一次資料だということも理解していました。
ただ、原文を見て読み解くのは初めてで。古文書は読めないけど、講座は聞いていて本当に楽しかったですね。




皆さんの信長愛が伝わってきましたよね!

好きだから読み解くのが楽しいんですよ。
隣に座っていた方は、信長公記をPCで打ち込んだわかりやすい資料をくださったりね。

講師と受講生の皆さんが和気あいあいでした。
みんな友だちって感じがよかったなぁ~。


講義は一方的に先生の話を聞くだけだと思っていらっしゃる方も多いと思いますけど、
実際は講師と受講生の間にいろいろなやりとりがあったりするんですよ。

そうですね、話を聞いておしまいじゃなく、お互い刺激しあっている感じがしました。
太田牛一の自筆本で読み解く信長公記
講師:元岐阜県歴史博物館職員 吉田義治さん
信長の一代記である「信長公記」。なかでも最も信頼性が高いといわれている太田牛一の自筆本を読み解き、信長やその時代を探る講座です。



先生にお聞きしました!
信長の家臣だった太田牛一が書いた信長公記で、何年何月に何をしたかが書かれています。信長に興味があって受講されている方がほとんどですが、中には古文書を読むために来ている方も。学者並みに詳しい方もいて、互いに教え合うこともあります。講座のメンバーでツアーを組んで出掛けたり、勉強会を開いたり、皆さん楽しんでいますよ。
受講生の皆さんにお聞きしました!
「信長が好きで、もう10年も通っています」
「講義の中で信長の性格が見えてくるのが楽しいです」
「信長よりも、古文書が読みたくて来ています」

茶道や華道は道を究めるものだと思いますが、文化センターは深く究めるというより、その導入部なんですよね?

はい。もちろん、免状や段・級が取れる講座もありますし、展覧会に応募する方もいます。
でも、趣味として楽しまれている方が多いですね。

文化に親しむ場所なんだね。仲間づくりのきっかけにもなるし。

実は、体験に行くのは気が重かったんですよ。
できれば行きたくないなぁと思っていました。
でも、先週の水墨画講座が思った以上に楽しくて、今日の信長公記は「行きたい!」という思いで来ました。
ハマったというか、ハメられたというか(笑)。
講座を受ける前と後とで、こんなに気持ちが変わるとは思ってもみませんでしたよ。
やっぱり、食わず嫌いはいけませんね。

心もカラダも健康で、
幸せな老後を生きるために。

中日文化センターに通う方たちって、おしゃれで元気な人が多いような気がするなぁ。
学びや趣味が、認知症予防や健康寿命にも関係するって聞きますよね。

そうだと思います。外から受ける刺激が自身を活性化させるんじゃないでしょうか。
学びから得られる刺激もあるでしょうし、仲間との人間関係から受ける刺激もありますからね。栄に出掛けるとなると、服装も髪型も気にしますし。


アハ体験というか、
今まで経験したことがないことで喜びや驚き、発見がありました。
仲間と楽しむ趣味は、
認知症リスク低減につながる
人生100年時代、いかに長く生きるかではなく、いかに健康寿命を延ばすかが重要となっている今、社会参加と介護予防・認知症リスクとの関連についてさまざまな調査・研究が進んでいます。
厚生労働省が発表した高齢者の趣味活動と認知症リスクに関する調査では、スポーツ関係、ボランティア、趣味関係のグループ等の社会参加の割合が高い地域ほど、転倒や認知症、うつのリスクが低い傾向が見られました。
グループでの活動での効果は千葉大学予防医学センターの研究でも確認されており、趣味を一人でする高齢者より、グループでする方が認知症を発症する確率が19%も低くなっています。
また、内閣府の調査によると、趣味やスポーツ、地域行事などの社会活動へ参加した人の方が生きがいを感じやすいという結果が。
健康寿命を延ばすには、楽しめる趣味を持つことや、社会的なつながりを維持することが重要だといえそうです。
出典:厚生労働省 「認知症予防に関する資料」/千葉大学予防医学センター「趣味は一人でするのに比べてグループですると 知症になる確率が19%低い」/内閣府「令和5年度高齢社会対策総合調査」

資料:内閣府「令和5年度高齢社会対策総合調査(高齢者の住宅と生活環境に関する調査)」(注1)「何らかの活動に参加した人」とは、直近1年間に「趣味(俳句、詩吟、陶芸等)」「健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)」「生産・就業(生きがいのための園芸・飼育、シルバー人材センター等)」「教育関連・文化啓発活動(学習会、子ども会の育成、郷土芸能の伝承等)」「生活環境改善(環境美化、緑化推進、まちづくり等)」「安全管理(交通安全、防犯、防災等)」「高齢者の支援(家事援助、移送等)」「子育て支援(保育の手伝い等)」「地域行事(祭りなどの地域の催しものに参加)」のいずれかに参加した人を指す。(注2)四捨五入の関係で足し合わせても100.0%にならない場合がある。

カルチャーセンターって、趣味を楽しんだり、新しい学びに挑戦したりするでしょ。
それに、講座の仲間とのランチやおしゃべりが楽しいって人たくさんいたよね!
これって、健康寿命を延ばすにはぴったりの場所だよね。
文化センター部長の猪飼さんにも、お話をうかがいました!

石村さん、講座体験は楽しんでいただけましたか?

行きたくないと思っていた自分がこんなに変わるなんて驚いています。
何かやりたいという気持ちになりました。


私も仕事一筋で、趣味を持つこともなく40年間突っ走ってきました。
退職後、抜け殻になるのは男性も女性も同じだと思うんですよ。
だから、最近では皆さんちょっと早めに、50代から退職後のことを考えて趣味をはじめられていますね。今からいろいろ少しずつつまんで、好きなことを探す。
カルチャーセンターはつまみ食いできるのが魅力なんです。合わなければやめればいいですしね。皆さん気軽にトライして、中にはライフワークにされている人もいます。
そんな風に皆さんい新しい何かを見つけていただけるとうれしいですね。


そうか!
文化って敷居が高そうだと思っていたけど、気軽にはじめてみればいいんだ!
好きなことが見つかると毎日が楽しくなるだろうし、会社とは別の新しい世界に出会えるもんね。
石村社長も新しい仲間や社会とつながり続けて、これからもいきいき生きてくださいね。




中日文化センター
栄/鳴海/南大高/犬山/高蔵寺/豊田/知立/ぎふ/大垣/津/金沢
1966年、地域の生涯学習の拠点としてオープン。東海・北陸に11センターを展開し、伝統文化から今話題のお稽古まで幅広い講座を開講中。
登録料不要で気軽に参加できる1day講座も人気となっている。
中日文化センターでは、いつでも気軽に講座の見学が可能。まずは、気になる講座を見てみることから始めよう!
※見学に予約が必要な講座もあります。事前に各センターにお問い合わせください。
公式WEBサイト https://www.chunichi-culture.com/
お話を伺ったのは

田中 学さん
中日文化センター栄 事務局長 兼
事業戦略課課長

猪飼 球子さん
中日文化センター部長
最後に、ケアネーネ編集部から一言~!
いくつになっても、友だちつくって、学び遊び続けよう!
人生100年時代の超高齢社会。
定年後の人生が30年近くあることになります。
誰もができる限り長く健康で、生きがいをもって、イキイキと暮らしたいと思うのは当然ですが、そのためにどうしたら老化を少しでも遅らせられるか。
鍵は、『趣味』『友達』『外出』にある気がしています。
テレビの前で、退屈なんてしちゃ、もったいない。
今すぐ、近くのカルチャーセンターを探してみましょう。