よむよむかたる

著者:朝倉かすみ
文藝春秋
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《本を紹介する人》ケアネーネ編集部「おはぎ」

人生の目標は、ピンピンコロリ。
健康で長生きするために本気でダイエットをはじめたover50。
小さいことを気にするわりに、嫌なことは一晩寝たら忘れるタイプ。
大好きな推しの活躍を原動力に、今日も老いに立ち向かう!

わたし、やっぱり本が好きだわ!
本を読む楽しさを思い出させてくれた小説。

クセ強な老人たちが繰り広げる「読書会」。
活動20周年をむかえた、平均年齢85歳の超高齢サークルの物語。

物語の舞台は、小樽にある古民家カフェ「喫茶シトロン」。ここでは月に1回、老人たちが集まり《坂の途中で本を読む会》という読書会を行っている。

メンバーは、最年長92歳、最年少78歳、平均年齢85歳という超高齢サークル。
この人たち、とにかく、まあ、全員クセが強い(笑)。

・元アナウンサーで仕切り上手だが、持病のせいで怒りっぽい「会長」(88歳)
・白髪をお団子にまとめ、メルヘンな洋服を着こなす副会長「シルバニア」(86歳)
・ふくよかで彫りの深い顔立ち、会計を担当している「マンマ」(82歳)
・方言の通訳をしてくれる元中学校教師の「蝶ネクタイ」(86歳)
・毎回のように息子の話をする最高齢の「まちゃえさん」(92歳)
・まちゃえさんの夫。付き添いで入会した唯一の70代「シンちゃん」(78歳)

個性豊かな老人たちによる読書会の様子が、会の世話役で小説家(スランプ中)でもある喫茶シトロン店長・安田「やっくん」(28歳)の視点で語られていく。

「老人あるある」にくすりとさせられたり、戦争の話にしんみりさせられたり、
高齢者ならではの会話に引き込まれる。

読書会では、佐藤さとるさんの名作児童文学『だれも知らない小さな国』を一人ひとりが少しずつ朗読し、みんなで感想を語り合うのだが、毎回、話が脇にどんどんそれていき、しゃべりたい放題の無法地帯となる。かと思えば、興味が一致する話題については、団結して大いに盛り上がる。この様子が、実におもしろい。

老人たちの会話にはリアリティがあり、ある話題から病気の話になったり、昔の武勇伝の話になったり、戦争体験の話になったり、「老人あるある」展開の連続。

それぞれのキャラが際立っているため、文字で読んでいるはずなのに、いろんな老人たちの声がサラウンドで聞こえてくるようなのだ。

「喫茶シトロン」が近所にあったら、わたしは絶対、覗きに行っていると思うわ。

本を読む時間は、実はとても贅沢なもの。人生を豊かにしてくれる。

この読書会以外に、さまざまなストーリーが展開していくのもこの作品の魅力である。

・やっくんがスランプに陥ったきっかけとある女性との出会い
・20周年を迎えた《坂の途中で本を読む会》の記念冊子エピソード
・シトロンの元オーナーでやっくんの叔母である美智留の過去
・まちゃえさんの息子にまつわる真実など

読書会を縦軸に、これらのエピソードが横軸となって絡み合い、物語に深みを与えている。

美智留の独白からはじまる後半からは、心揺さぶられる展開が待っていた。老人たちが登場することからある程度予測はしていたが、終盤には、ある悲しい出来事がおこってしまう。身体の衰え、病気、痴呆、そして死。生きてくうえで向き合わざるを得ない「死生観」についてもふれていくのだが、そこに『だれも知らない小さな国』のコロボックルの存在が活きてくる。上手いなぁ。物語の最後、未来の明るい兆しを見せて終わっているのも良い。

人は歳を重ねた分だけ、自分の物語を持っている。登場人物たちの人生をなぞっていくことで再認識させられた。本を読むことは、実はとても贅沢なもので、ベタだけれど、人生を豊かにしてくれる。あらためて気づかされたことに感謝したくなる一冊だった。



目次

第一章 老人たちの読書会

第二章 いつかの手紙

第三章 ご返事ご無用

第四章 恋はいいぞ

第五章 冷麦の赤いの

第六章 一瞬、微かに

第七章 おぅい、おぅい

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