祖母姫、ロンドンへ行く!

著者:椹野 道流
小学館
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《本を紹介する人》ケアネーネ編集部「おはぎ」

人生の目標は、ピンピンコロリ。
健康で長生きするために本気でダイエットをはじめたover50。
小さいことを気にするわりに、嫌なことは一晩寝たら忘れるタイプ。
大好きな推しの活躍を原動力に、今日も老いに立ち向かう!

自己肯定感とホスピタリティについて
あらためて考えさせられる一冊

「お姫様のような旅がしたい」祖母の願いに翻弄される孫娘のエッセイ。

孫娘(著者)が、お世話係として80歳を超える祖母とイギリスを旅する「祖母と孫の英国珍道中」を描いたエッセイ。と思いきや、「え、これって人生のバイブルになるのでは?」と思うほどの名言・名エピソードがてんこ盛り。自分らしく生きるためには何が大切なのか。真のホスピタリティとは何なのか。そのヒントを教えてくれる一冊だ。

旅のはじまりは、親戚の集まりで英国留学の思い出話を披露した孫娘(著者)に、祖母が「一度でいいからロンドンに行きたい、お姫様のような旅をしたい」と口にしたことがきっかけ。そこから親戚総出で「一流のデパートで買い物をして、最高のディナーを楽しみ、お友達に自慢できるような素敵なものをたくさん見たい」という祖母のリクエストを叶える豪華旅を手配し、孫娘が慣れないツアコン(秘書)役に任命された。

行き帰りのフライトは日系航空会社のファーストクラス、宿泊はロンドン中心部の5ツ星ホテルのジュニアスイート、移動はすべてタクシー。大英博物館、ロンドン塔、ハロッズ、フォートナム&メイソン、ロンドン三越、オリエント急行、憧れのアフタヌーンティーなど“お姫様”にふさわしい贅沢な旅が続く。

ハッとさせられる「祖母姫」の名言が続々。

旅先で孫娘を一番困らせたのが、痛快とも言えるおばあさまのワガママっぷりである。おばあさまは「祖母姫」の名にふさわしく、ファッションにも食べ物にも、自分なりの美学やこだわりがあり、妥協をしない。ジュエリーが大好きで「干物や石ばっかり見せられてもね……」と大英博物館は華麗にスルー。自己肯定感が非常に高く、自信にあふれ、自分らしさを貫く強さをもっている。

これに付き合わされる孫は本当に大変なのだが、祖母姫の言葉や行動には信念があり、こちらもハッとさせられることが多い。訪れる先々で高い見識と審美眼を発揮する祖母を見た孫娘は、「偉そうで我が儘で厄介な婆さん」であった祖母を、「頭の中に莫大な記憶と経験と知識を詰め込んだ、偉大な人生の先輩」と認識し直すのだ。

わたしが個人的に印象的だったのは、いつも美しくお化粧をして、肌のお手入れも欠かさない祖母姫が、おしゃれに手抜きな孫娘に「楽をせず、努力をしなさい。いつも、そのときの最高の自分で、他人様のお相手をしなさいよ。オシャレもお化粧も、そのために必要だと思ったらしなさい。胸を張って堂々と、でも相手のことも尊敬してお相手をする。それが謙虚です」と言って口紅を差し出すシーンだ。

「謙虚と卑下は違うものなの。自信がないから、自分のことをつまらないものみたいに言って、相手に見くびってもらって楽をしようとするのはやめなさい。それは卑下。とてもみっともないものよ」とたしなめる。祖母姫の自己肯定感がとんでもなく高いのは、自分を信じて努力してきた自負があるからなのだ。

卓越したホスピタリティに感動。

また、旅を語るうえで欠かせないのが、ホテルスタッフの卓越したおもてなしである。「祖母姫」のロンドン旅を最高の思い出にするために、孫娘と力を合わせて奮闘する様子は、真剣なのにどこかコメディ感もあって、物語に深みを与えている。
中でも、バトラー(客室係)ティムとのエピソードは秀逸なものばかり。スマートな立ち振舞、ウィットに富んだ会話、目配り気配り心配り、すべてにおいて極上。「こんな人、映画や漫画でしか見たことないわ!」とツッコミを入れたくなるほど完璧なのだ。

しかし、このティムにも、祖母姫は容赦ない。梅干しでおもてなししようと頑張ったティムに対して、「お茶菓子とお茶請けはちょっと違う。そこは『とやらの羊羹』を出すべきだった」とピシャリ。「(ティムの心遣いに)本当に感謝しているなら、具合の悪いことをそのままにしてはだめよ。そりゃ勿論、梅干しを喜ぶ人もいるでしょうけど、甘味のほうが無難でしょ。次に日本からお客さんが来たとき、この人が恥をかかないように、優しい思いやりがちゃんと報われるようにしてあげるほうがいいと思うわ」それを聞いたティムは嬉しそうに今後の参考にしますと微笑んだ。真のホスピタリティを知る人同士の痺れるやり取りだ。「一期一会に楔を打っていく祖母」と一流のホテルマンたちのエレガントな交流は作中にたくさん登場するので、ぜひ、読んでほしい。

そうそう、ファーストクラスのCAさんの名言も紹介しておきたい。「大切なのは、お祖母様には何ができないかではなく、何をご自分でできるのかを見極めることだと思います。できないことを数え上げたり、時間をかければできるのにできないと早急に決めつけて手を出したりするのは、結局、お相手の誇りを傷つけることに繋がりますから」。ホスピタリティの原点にあらためて気づかされる言葉だと思う。

旅は人の心を潤し、成長させてくれるのだなあとしみじみ。今度ロンドンへ行くときは、しっかり働いてお金をためて、ティムのようなバトラーのいるホテルに宿泊しよう!と新たな目標ができたのだった。

目次

1.  祖母、祖母姫となる
2.  祖母姫、ヒースローで怒る!
3.  祖母姫、イギリスと会う
4.  秘書孫、バッド・ガールになる
5.  祖母姫、ロンドン塔で大ハッスル!
6.  祖母姫、ハロッズで囲まれる 
7.  祖母姫、平安女子を語る
8.  バトラー、祖母姫をもてなす
9.  祖母姫、列車で貴婦人に!?
10.  祖母姫、秘書孫を諭す
11.  祖母姫、お茶の時間を欲す
12.  祖母姫、お寿司に浮気?
13.  祖母姫、アフタヌーンティーへ出陣する
14.  祖母姫、スコーンと格闘する
15.  秘書孫、再びのバッド・ガールに・・・!?
16.  ”T”と、その仲間
17.  バッド・ガール、南に進路をとる
18.  バッド・ガール、月に誓う
19.  祖母姫、最後のランチ計画
20.  秘書孫、寿司クエスト
21.  バトラー、寿司ランチに招かれる
22.  祖母姫、ホテルを発つ
23.  秘書孫、旅のおわりに

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