推し、燃ゆ

著者:宇佐見 りん
河出書房新社
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《本を紹介する人》ケアネーネ編集部「おはぎ」

人生の目標は、ピンピンコロリ。
健康で長生きするために本気でダイエットをはじめたover50。
小さいことを気にするわりに、嫌なことは一晩寝たら忘れるタイプ。
大好きな推しの活躍を原動力に、今日も老いに立ち向かう!

推しのいる人は、覚悟して読むべし。

「推しを推す」ことを本気で考えるきっかけになる一冊。

人生を捧げている推しがいる人といない人では、たぶん、読後の感想がかなり違ってくる作品。私は前者なので、読み終わったいま、猛烈に心をえぐられている。

今回紹介する『推し、燃ゆ』は、第164回芥川賞を受賞し、2021年もっとも売れた大ベストセラー小説。
主人公のあかりは、学校生活になじめず勉強も苦手、人とうまく関わることができず家庭内でも浮いている。そんな生きづらさを抱えている高校生。アイドルグループのメンバー・上野真幸を推すこと心の支えにしている。
ところが、ある日、衝撃的なニュースが飛び込んできた。

推しが炎上した。ファンを殴ったらしい。

メディアやSNSでは批判的な声があふれ、まさに炎上。原因は何なのか?相手との関係は?真相がわからず憶測だけが飛び交うなか、あかりは「未来永劫、わたしの推しは彼だけ」と、以前と変わらず全身全霊で真幸を推し続けていく。

果たしてこの先、炎上した「推し」はどんな道を選ぶのか。
その選択をあかりはどう受け入れていくのか。
128ページという短い物語だが、内容は息苦しいほど濃密。
推しを推す人生についてあらためて考えさせられる作品だ。

「推し活」のファン心理をリアルに描く。

本作は、主人公のあかり目線で綴られている。その行動や心理描写が、まあ、本当にリアルで生々しくて。私は共感しすぎて、息苦しくなったほどだ。

参考までに、作中で描かれるあかりの「推し活」を一部抜粋してみた。

・ライブにはとびきりおしゃれをして参戦する。
・CDやDVDや写真集は保存用・観賞用・貸出用に常に3つ買う。
・部屋には写真やグッズを飾る「祭壇」がある。
・バイトのシフトは推しの活動に合わせて組む。
・放送された番組はダビングして何度も観返す。
・映像は一時停止して表情や衣装まで細かく確認する。
・メディアでの発言はもれなくチェックして“解釈”する。
・解釈したものを記録したブログを日々更新する。


推しのいない人は、ただの趣味や遊びじゃないかと思うかもしれない。
気持ち悪いとさえ感じる人もいるかもしれない。
でも彼女にとって「推し活」は生きるために必要なものなのだ。
わかる、わかるよ、あかり。と、私も強く共感しながら読み進めた。

家族や恋人、友人など、大切な人がなぜ「推し活」にのめり込むのか。それを理解したいと思っている人には、ぜひ読んでほしい。「推し活」をする理由が、少しでもわかってもらえる気がする。それぐらい、おたくの生態と心理がリアルに描かれているから。

文芸作品らしい、繊細で力強い表現力。

すさまじい表現力もこの作品の魅力のひとつだ。
文章のうまさは半端なく、とにかく比喩表現がえぐい。
あかりの見ている風景や感覚、感情が、美しい比喩を通して生々しく迫ってくる。
私も気がついたら、あかりの推し活を追体験していた。

「推しのいない人生は余生」
「理解ではなく解釈」
「守ってあげたくなる、切なくなるような“かわいい”は最強」

おたくにはたまらない名言も次々と登場する。

また、作品の冒頭、あかりは病院でふたつの診断名を告げられる。具体的な病名は明かされていないが、おそらく精神的なあの病名なのだろうと連想させる描写力には脱帽した。
読点なしで書かれる長文、メッセージアプリで交わす友人とのやり取り、SNSへのコメント、ブログなど、現代の若者の世界観を描く文章力も見事だ。おたく文化に興味のない人でも、文芸作品として非常に読みごたえのある作品になっている。

推し活が終わる。正しくは、強制的に終わらされる。この怖さは、おたくにとって他人事ではない。推しのいる私にとって、『推し、燃ゆ』は、正直ハードルの高い作品だったが、「推し活の終焉とどう向き合うか」その心構えとして、読んでよかったと思っている。ためらっているおたくのあなた。覚悟を決めて、ぜひこの本を手にとってほしい。

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