「健康で長生きしたい」「自分らしく人生を歩みたい」 そのためのヒントを本からもらってみませんか。 なかには人生の大きな転機となる出会いがあるかも。 このコーナーでは、ケアネーネ編集部が気になっている本をご紹介。 読んだあと、あなたが歩む道の先を少しでも明るく照らせるといいなと思いながら丁寧に選びます。
著者:阿部 暁子
講談社
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《本を紹介する人》ケアネーネ編集部「おはぎ」
人生の目標は、ピンピンコロリ。
健康で長生きするために本気でダイエットをはじめたover50。
小さいことを気にするわりに、嫌なことは一晩寝たら忘れるタイプ。
大好きな推しの活躍を原動力に、今日も老いに立ち向かう!
「傷つき、困難にぶつかっても、人は必ず前に進める」と信じさせてくれる物語。
読み進めていくうちに、こわばった心がほぐされていく。
読了後のわたし、泣きました。はい。思わず涙してしまった。
「人は一人では生きられない。心が弱ったときに、そばで支えてくれる人がいるのはありがたいことなのだな」とあらためて気付かされる。本屋大賞の有力作と話題になるのもうなずける作品だ。
“溺愛していた弟が急死してしまった野宮薫子と、その弟の元恋人であった小野寺せつな。弟の遺言書をきっかけに再会するが、彼の最期の願いを冷淡に断るせつなに、薫子は戸惑い、反目する。やがて、薫子はせつなが勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うようになり、生活に困窮するさまざまな人と出会い、せつなの過去を知っていくことで、互いの距離を縮めていく。”
あらすじは、ざっくりまとめるとこんな感じなのだが、家事代行サービスの活動を通して主人公たちが歩み寄っていく様子を、あたたかく丁寧に描いている。
なかでも食べ物の描写は秀逸で、料理の見た目、色合い、匂い、温度、食べる音なども表現力豊かに描かれ、読んでいるとお腹が空いてくる。そして、「おいしい」と感じることがどれほど人の心を落ち着かせるのか、さまざまな料理を通して繰り返し伝えられてくる。
個人的に印象的だった料理は、せつなが薫子にはじめて作ってあげた豆乳素麺。すさんでいた薫子の心をほぐし、せつなとの距離を縮めるきっかけとなった一品だ。
美味しいものを食べて、清潔に暮らす。当たり前のことができる幸せを再認識。
不妊、離婚、愛する弟の死など、過酷な人生に傷つき、酒に溺れ、生きる気力をなくしていた薫子。弟の春彦の死の真相、せつなの抱えている事情、夫から突きつけられた離婚の理由など、彼女をとりまく人たちの知られざる真実も、物語が進むにつれて明らかになっていく。
弟の春彦はなぜ死んだのか?
せつなはなぜ春彦の遺言を拒否したのか?
夫はなぜ離婚を切り出したのか?
それまで違和感のあった出来事が終盤で一気に回収されていき、心温まるエンディングにつながっていく。
そして、ボロボロだった薫子が、生き生きと再生していく様子に、こちらの心も晴れていった。清潔な家に住み、おいしいものを食べる。生活の基盤が整うだけで、人は前向きに一歩を踏み出せるのだ。
ちなみにタイトルの「カフネ」とはポルトガル語で、「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」を意味するらしい。その名の通り、弱った心に優しく寄り添ってくれる物語だった。
「一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい」
作品のキャッチフレーズが読了後、心にしみる。
目次
第一章
第二章
第三章
第四章
終章
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