「健康で長生きしたい」「自分らしく人生を歩みたい」 そのためのヒントを本からもらってみませんか。 なかには人生の大きな転機となる出会いがあるかも。 このコーナーでは、ケアネーネ編集部が気になっている本をご紹介。 読んだあと、あなたが歩む道の先を少しでも明るく照らせるといいなと思いながら丁寧に選びます。

著者:橋本 治
講談社
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《本を紹介する人》ケアネーネ編集部「おはぎ」

人生の目標は、ピンピンコロリ。
健康で長生きするために本気でダイエットをはじめたover50。
小さいことを気にするわりに、嫌なことは一晩寝たら忘れるタイプ。
大好きな推しの活躍を原動力に、今日も老いに立ち向かう!
九十八歳でも、まだまだ語れることがある。
九十八歳。元・小説家。独居老人。未来の東京で、今日もボヤく
もしも自分が九十八歳になったとき、何を考えているだろう。
世界を憂う? 健康を嘆く? 過去を懐かしむ?いやいや、もしかしたら、こんなふうに愚痴をこぼしたり、
意味不明な妄想を繰り広げたり、時に冴えた真実をポツリと漏らしたりしているかもしれない。
本作は、橋本治が遺した、「近未来空想科学私小説」だ。舞台は、なんと2046年。東京大震災を生き延びた「九十八歳になった橋本治」の独白として物語は進んでいく。
そんな「九十八歳になった橋本治」のもとを、ボランティアのバーさんや、ゆとり世代の50代編集者、メロンのロボット「ガンダムくん」の娘など、さまざまな人物が訪れる。
それらに適当なツッコミを入れたり、なぜか近所に棲んでいるプテラノドンを退治したり、あるいはただただ疲れて寝ていたりしながら、「私」は気ままに、自由に、そして時に哲学的に、自分の老いと時代を語っていく。
こんなに軽やかに、「老い」を笑い飛ばした本があっただろうか
冒頭から、「生きるのは疲れる」なんてボヤきつつ、人生に深みのある言葉が、肩肘張らずにサラリと出てくるのが橋本治らしい。
「人生は消しゴムのようなものだ。いくら使って消して行っても、使い切るということは起こらないのだ。」
この一文にはっとさせられた人も多いのではないだろうか。
「そうか、人生って、無限ではないけど、すぐにはなくならない。ちょっとずつ、すり減っていくんだな」と思うと、何だか今日の疲れも「まあいっか」と笑える気がする。
「生きることはめんどくさいのだ」
「年取ると、困ったことに、自分が疲れてるかどうかも分からなくなって来る」
「自分をほめないと生きて行けない」
など、不思議と心にひっかかる名言が、たくさん登場するのも良い。
読後、誰かに話したくなる「くだらなさ」と「真理」
正直、この作品には「明確な物語」や「感動の山場」はない。あるのは、老人のぐだぐだとした語りと、時折あらわれる妙に的を射たセリフ。けれど、それがたまらなくおもしろい。特に、後半に出てくる「九十九歳になっちゃうじゃないかの巻」など、切ないのに笑ってしまった。
一方で、「死にそうでなぜ死なないの巻」では、老いと生のリアルがぐっと胸に迫ってくる。
そして、読むうちに、こちらの脳内にも“九十八歳の自分”が生まれてくる。人生の終盤にある「面白み」「厄介さ」「可笑しみ」が、妙に愛おしく思えてくるのだ。
こんなに自由でいいのか、と思うくらい自由
高齢というテーマを扱いながらも、深刻になりすぎず、むしろ、年を取るとはこういうふうに「ゆるく」「脱力して」「可笑しく」語っていいのだと、見せてくれている。
「ちゃんと老いよう」「立派に老いよう」なんて力まなくていい。むしろ「くだらなさ」や「ナンセンス」のなかにこそ、人間らしさの真理がある——。
そう教えてくれるこの本自体が、作者からの最後のユーモアに満ちたメッセージのようだ。
老いにユーモアを。人生にナンセンスを。
『九十八歳になった私』は、人生の終盤に向かうすべての人に贈りたい、ちょっと風変わりな「老いの読本」だ。
哲学書でも、エッセイでも、小説でもない。でも全部の要素が、ゆるく、ぐるぐると、混ざっている。
「老いるって、そんなに悪くないかもしれない」
「むしろ、こんなふうに笑えるなら、年をとるのもいいな」
読み終わったあと、そんなふうに思えたなら、きっとそれが、橋本治という作家の“冴えたやさしさ”なのだと思う。
目次
九十八歳になる私
九十八歳になった私
国会解散の巻
ロボット君の巻
白紙の巻
病院に行ってましたの巻
女はこわいよの巻
プテラノドン退治の巻
九十九歳になっちゃうじゃないかの巻
メロンの娘の巻
たまには起こせよなんとかメントの巻
カナブンに寄せる思いの巻
死にそうでなぜ死なないの巻
人生は消しゴムだの巻
あとがき
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