「健康で長生きしたい」「自分らしく人生を歩みたい」 そのためのヒントを本からもらってみませんか。 なかには人生の大きな転機となる出会いがあるかも。 このコーナーでは、ケアネーネ編集部が気になっている本をご紹介。 読んだあと、あなたが歩む道の先を少しでも明るく照らせるといいなと思いながら丁寧に選びます。

著者:ジェーン・スー
新潮新書
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《本を紹介する人》ケアネーネ編集部「おはぎ」

人生の目標は、ピンピンコロリ。
健康で長生きするために本気でダイエットをはじめたover50。
小さいことを気にするわりに、嫌なことは一晩寝たら忘れるタイプ。
大好きな推しの活躍を原動力に、今日も老いに立ち向かう!
「まだ介護じゃない」でも、もう始まっているかもしれない
「まだ介護は必要ない」と思っていた生活に忍び寄る現実
85歳で一人暮らしをしている母の家を訪ねたら、電子レンジの中に煮物がいた。
3日前にチンしたまま、取り出し忘れていたらしい。
冷蔵庫を開ければ、賞味期限が半年過ぎた納豆と、いつ開封したのかもわからないジャムの瓶。玄関にはビニル傘が10本ほど置かれ、リビングの隅では段ボールが開封されずに積まれていた。
「生活できているし、病院にも自分で行ってる。だから、うちは大丈夫」と思っていた。
でも正直、なんとなく、うっすら、不安だった。
生活の“ほころび”が、じわじわと顔を出しはじめていたのだ。
そんなときに手に取ったのが、ジェーン・スーさんの『介護未満の父に起きたこと』。タイトルを見た瞬間、「これ、うちじゃん……!」と、迷わずレジへ向かっていた。
「老人以上、介護未満」な時期に必要なこと
この本で描かれているのは、介護認定を受けるほどではないけれど、日々の暮らしに少しずつ“穴”が開きはじめた父との生活と向き合う日々だ。
著者であるジェーン・スーさんは、コラムニストとして、鋭さとユーモアを両立させた軽やかな語り口で知られている。その彼女が、80代の父と過ごした5年間の奮闘を、ユーモアを交えながらもきわめて真剣に記録しているのが本書だ。
「老人以上、介護未満」——
この微妙であいまいな時期に、親の生活にどう手を差し伸べるのか。そんな悩みを持つ人にとって、本書は最初の道標のような存在になると思う。
父と娘の「生活のアップデート」が始まる
スーさんがこの出来事に向き合うきっかけは、82歳から始まった父の一人暮らしだった。
「足の踏み場がない居室」「廊下に積まれた賞味期限切れの食品たち」
「着なくなった衣類など不用品の山」
「ハサミやペン、健康食品、お菓子、書類などに占拠されたダイニングテーブル」
「“もう充分食べた”と言いながら減っていく体重」……
足腰が弱り、買い物や調理が難しくなり、「自立した生活」が少しずつ揺らぎ始める。
さらに、スーさんの父には、介護認定が下りていない。つまり“公的な支援”の網の目からはこぼれ落ちている状態だ。スーさんはその事実を、冷静に、でも決してあきらめずに記録していく。
「まずは食事」「会話が途切れないLINE」「家事代行を最適化」
まるで介護の“プレ段階”を、試行錯誤しながらビジネスライクに構築していく。ITやアプリを導入したスマート介護に取り組んだり、家事代行サービスを試したり、LINEでこまめにやりとりを続けたり——
いわば“生活のアップデート”を重ねながら、父の「自立」をできる限り保とうと奮闘する。
情でやらず、でも愛はある。そんな距離感が心地よい
この本には、「娘が介護に奔走する涙の物語」は出てこない。むしろ、できることとできないことを冷静に分け、時に淡々と「それはやらない」と線引きする姿勢が印象的だ。
でも、そこには確かに“愛”がある。
それは、情熱的で燃えるような愛情ではなく、風通しのいい、誠実な「伴走者としての愛」だ。そして、そんな愛の形が、今の時代にはすごく自然で、共感できる。
私自身、読みながら何度もメモを取りたくなった。
「家事代行は一回でなく、継続の仕組みが必要」
「生活動線を変えるだけで、暮らしは変わる」
「“父がどうしたいか”より“何なら続けられるか”を考える」
どれも、自分の親に置きかえてみたときに、今からでも役立ちそうな気づきだった。“介護”という言葉が少し重たく感じる今の自分に、この「介護未満」という軽やかな言葉は、ちょうどいい入口だった。
父との時間は、まだ続いていく
本書は、87歳になる父の生活が、まだ「進行中」であるところで幕を閉じる。完全な解決もない。成功談もない。でも、それがリアルなのだ。
介護の入り口にいる人、今まさに進行中の人、これから直面するかもしれない人。そのどの立場であっても、この本を読めば、ちょっとだけ勇気が湧いてくる。ちょっとだけ心が軽くなる。
『介護未満の父に起きたこと』。
笑えて、刺さって、涙ぐんで、読み終わったあとに、「うちもちょっと準備しておこうかな」と思える一冊です。
目次
はじめに
第一章 老人以上、介護未満の父――2020年(父82歳)
1.突然のSOS
それは突然やってきた/生活力ゼロの父/老人以上、介護未満
2.誰がための安心か
ビジネス書に学べ!/あるべきゴールと三つの基本方針/「まるで刑務所みたい」
3.父の「できること/できないこと」
痩せるばかりの父/父の状況をノートに整理/まずはとにかく食事から/はじめての遠隔Uber Eats
4.それはまるで終わらないフジロック
「前科二犯」/お椀が持てない/家族といえどもビジネスライクに/トライアル&エラーの連続
第二章 世紀の大掃除!――2021年前半(父82~83歳)
1.さあ、次は家事代行サービスだ
父の愛した文鳥/家事代行サービスを試す/十人十色のサービス
2.大掃除を成功させるための心得
人生二度目の「世紀の大掃除」/「2回で8万円」の見積もり/大掃除を成功させるポイント/「父と娘のフジロック」がスタート
3.2日間のクリーニング公演
4時間×2日の大掃除/父の生活動線を再設計/ようやくスッキリ!/それも捨てたいけれど……
4.あきらめるところ、あきらめないところ
ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』/「私は女・山本五十六」/しぶとい娘、父を諭す
5.三つの課題と目下の不安
メカニックとテストドライバー/主な三つのサポート/必須の父娘LINE/運動不足をどう解消させるか
6.生きるとか死ぬとかワクチンとか
「ワクチン接種」というハードル/「かわいそうな象」/やればできる……のか!?/第二幕スタート!
第三章 押し寄せる課題と尽きない不安――2021年後半(父83歳)
1.心と体重をすり減らし
減り続ける体重/「私、もう疲れちゃった」/痛恨のミス
2.我慢と焦燥の夏
遠隔での生存確認/カロリーアップ作戦/「三本柱」をバランスよく
3.結果オーライ!
久々の訪問/やればできる!/失敗もあったけど……
4.墓参りは顔見せイベント
墓地で健康診断/予想外の訃報/いいぞ、その調子
5.「良かれと思って」が仇となり
「病院好き」の父/すれ違う思惑
第四章 ついに介護サービスを検討――2022年(父83~84歳)
1.「いざ」という時に必要なこと
認知症か、性格か/「介護サービス」を相談/介護者と被介護者の“運命”を分けるもの
2.フレイルとサルコペニア
健康と要介護の“中間”/受験勉強のような老人ケア/認知症は? うつは?/思わずガッツポーズ
3.ひとまずここまで
父は元気です……/父、84歳に/「要支援」未満の父
第五章 人生は簡単には終わらない――2023~2025年(父85~87歳)
1.父の「大丈夫」を引き伸ばす
さらに細くなった父/父の生活は続く/文鳥をめぐる「大事件」/火の玉老人/「騙し騙し」を続けるだけ
2.衰えゆく父と娘のジレンマ
脱水症状、骨折、コロナ……/必要なのは、介護手前の生活援助/家事代行からホームヘルパーヘ/水頭症の手術
3.「スマート介護」で解決だ!
介護者の心を楽にするIT/タクシーアプリで移動も安心
4.コロナ、転倒骨折、癌
怒涛の一年/あんなに気を付けていたのに……/なぜこのタイミングで?/87歳、とにもかくにも現状維持
おわりに
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