ポンコツ一家

著者:にしおか すみこ
講談社
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《本を紹介する人》ケアネーネ編集部「おはぎ」

人生の目標は、ピンピンコロリ。
健康で長生きするために本気でダイエットをはじめたover50。
小さいことを気にするわりに、嫌なことは一晩寝たら忘れるタイプ。
大好きな推しの活躍を原動力に、今日も老いに立ち向かう!

想像のずっと上をいく「壮絶なのに笑える」家族の物語。

家の中に砂が!? 笑えるのに泣ける介護エッセイ

著者のにしおかすみこさんは、かつて女王様キャラのネタでブレイクしたお笑い芸人。その彼女が描く家族構成は、なかなかに強烈だ。

母:80歳、認知症。
姉:47歳、ダウン症。
父:81歳、酔っ払い。
私:45歳、元SM女王様キャラの“一発屋”女芸人。行き遅れ。

「全員ポンコツである」。

この一文からして、すでに心をつかまれ、読み始めたら止まらない。
“ポンコツ”と言いながらも、そこにあるのは嘲笑ではなく、限りない愛情と、ちょっとした照れくささである。家族の属性は違っても、「どこか似ている」と感じる読者は多いはずだ。

砂場のような実家から始まる「ポンコツ物語」

物語は、にしおかさんが、コロナ禍で久しぶりに実家に帰省したことから始まる。
玄関を開けると、いきなり漂ってきた異臭。ローテーブルには、割り箸が突き刺さったままのカップ麺、茶色くこびりついた惣菜の容器、セメント色のみかん、炭のように変色したバナナの皮が、層をなして積もっている。
換気しようと窓を開ければ、砂ぼこりで目詰まりした網戸から、ザザッと砂が降ってくる。まるで室内に砂場があるような有様である。

実家が「ちょっとしたゴミ屋敷」になっている。そして何より、大黒柱だった母の様子が、以前とまったく違っていた。

「私の知らない母」がそこにいた。
——いったい何がどうして、こうなってしまったのか。


にしおかさんは実家に戻ることを決意し、奮闘の日々が始まっていく。

「あるある」に思わず頷く日常の攻防戦

本書の魅力は、なんといっても具体的なエピソードの数々である。
記憶力テストで母が繰り出す予想外の回答、
お風呂を嫌がる母と姉とのバトル、火事未遂事件、薬の誤飲騒動——。
介護をしている人なら「わかるわかる!」と膝を打つような場面が満載だ。

どれも「介護現場あるある」でありながら、にしおかさん独特のユーモラスな語り口で描かれるため、読んでいて苦しくならない。
むしろクスッと笑える。でも、それは決して他人事ではない。誰もがいつか直面するかもしれない「家族の老い」という現実を、にしおかさんは逃げずに正面から受け止めているのだ。

「ポンコツ」は悪口ではなく、ラブレターである

本書のタイトルにもなっている「ポンコツ」という言葉。これは決して家族を見下す言葉ではない。
にしおかさんは「どんな状況だって、病気だって、『ポンコツ』な人はいない。でも、愛を持って私は家族を『ポンコツ』と呼ぶ」と語る。
認知症の母も、ダウン症の姉も、酔っぱらいの父も、そして元SMの一発屋の女芸人である自分も、みんな完璧じゃない。
でも、だからこそ愛おしい。その温かい眼差しが、読者の心にじんわりと染みてくる。

介護を「悲劇」として描くのではなく、「日常」として、そして時には「コメディ」として描いていることが、本書最大の魅力だと感じる。

壮絶なのに「希望」を見つける著者の姿勢

本書で何度も出てくるのが、にしおかさんの「なんとかする」という姿勢である。
認知症の症状も、介護の現場も、きれいごとでは済まない。怒号が飛び、話が通じず、何度説明しても振り出しに戻る。普通なら心が折れそうな場面でも、にしおかさんは諦めない。怒ったり、笑ったり、泣いたりしながらも、毎日を積み重ねていく。その姿には、読者を前向きにさせる力がある。

「介護は大変」——それは事実だ。でも、「介護は絶望」ではない。
その日その日を、家族と一緒に生きていくこと。小さな喜びを見つけること。ときには笑い飛ばすこと。そういった「生きる力」が、本書にはあふれている。

『ポンコツ一家』は、介護の現実を描いた本であると同時に、家族の絆を再確認する物語でもある。
完璧じゃないからこそ、愛おしい。そんな家族の姿が、読む人の心を温かくする。
介護に関わるすべての人に、そしてこれから介護に向き合うかもしれないすべての人に、読んでほしい一冊である。
きっと、あなたの心にも「希望の灯り」が灯るはずだ。

目次

1 実家が砂場になっていた
2 記憶力テスト
3 背比べ
4 ヘドロとドロボー
5 疑惑
6 大晦日の大事件
7 一月にクリスマス
8 地域包括支援センターと冷凍マグロ
9 大事な話
10 姉のバタフライ
11 ホタルイカ
12 ママ速報
13 私の大事な話
14 花火とぎゃくたい
15 干支
16 ワクチンで発熱
17 青い花
18 ソワソワ
あとがき

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